金作原。「きんさくばる」と読みます。それは奄美市名瀬の山中奥深くに位置する原生林。そこにはまるで太古を思わせるかのごとく木性のシダ植物が群生し、照葉樹とシダ植物が作る亜熱帯の森を間近に感じることができます。10mになろうかという高さにスラッと伸びたヒカゲヘゴ。天に傘さす大きな葉の広がりを下から見上げたり、あるいはその高さを支えるには心細いくらい細い幹の肌に描かれた模様をマジマジと眺めたり、林道を歩くだけで亜熱帯の彩りが目に飛び込んで来ます。
亜熱帯の森で特徴的なのが、木の上に植物が生えること。一般的に植物は水分を必要とし、地面に根をはって水を吸い上げる必要があります。が、亜熱帯では雨が多く湿度も豊富なので、シダ植物などが樹上で生活できるのです。樹上のシダ植物は、決して樹木に寄生しているわけではありません。樹木から栄養をもらっているわけではなく、単に樹木に乗っかったりくっついたりしているだけなのです。なので寄生ではなく着生と言います。樹皮にくっついたコケや、枝などに乗っかったオオタニワタリなど、金作原でも様々な着生植物を見ることができます。
林道を歩いていると、森から色んな音が聞こえてきます。歩くほどに様々な音が耳へ届くことでしょう。もし小刻みにドラムを叩くようなドラミングの音が聞こえてきたら、それはオーストンオオアカゲラです。赤や黒の帽子をかぶったようなキツツキの仲間です。美しい声を響かせる鳥もいれば、カラスのように叫ぶ鳥もいます。本当にカラス?のこともありますが、もしかしたらルリカケスの時もあります。ギャーギャーと鳴く声がしたら声の方へ目を凝らしてみて下さい。木立の向こうに瑠璃色の姿が見えるかもしれません。
森のお散歩は実に楽しいものでありますが、夢中になりすぎて怪我をしないようご用心。林道のすぐ横は崖になっています。ヒカゲヘゴを見上げる際には特に気をつけましょう。上を見ながら歩いて足を滑らせないように。また、奄美にはハブがいます。夜行性なので昼間は出会う可能性が低いのですが、もしかしたら枯葉の下などで休んでいるかもしれません。むやみに草むらに足を踏み入れたり、手を突っ込んだりしないようにしましょう。ハブと遭遇するなんて滅多にあることではありません。でも「もしかしたらそこにいるかもしれない」と思っておくのは奄美の基本的心構えです。
金作原へは「奄美群島認定エコツアーガイド」同伴でのご利用がお願いされています。また、自然環境保全・混雑緩和・安全確保等のため、金作原のツアー数に制限を設けています(同時間帯に車両最大10台まで)。ツアー数が上限に達した場合、ご希望の時間帯に金作原を利用できない可能性がありますのでご注意ください。詳しくは金作原ツアーを開催しているエコツアーガイドへおたずねください。
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